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犯罪被害者遺族について


先日、福岡市内で開催の犯罪被害者支援フォーラムに参加してきました。
聞きたかったのは、清水誠一郎さんの話。

清水さんは犯罪被害者のご遺族です。
20113月に熊本市で発生した殺人事件で、最愛の娘である心ちゃん(当時3歳)を亡くされました。
犯人は20歳の大学生の男、わいせつ目的の計画的犯行でした。
この事件のことは記憶にはありましたが、防犯活動に取り組む以前のことでもあり、事件に対して特別な関心を持つまでには至らなかったというのが当時の僕でした。

冒頭で当時の事件のニュース映像が流れ、その場の参加者も当時の事件を頭に思い浮かべたところで、清水さんがゆっくりと当時の状況を振り返りはじめます。

事件が起きるまでの経過とその時の心情を丁寧に話される清水さんの言葉に、僕は何度も心を揺れ動かされました。

3月3日のひな祭り、いつも通うスーパーに立ち寄り、心ちゃんがトイレに行きたいと言った。
1人ではダメだと止めたが言っても聞かなかった。トイレは目と鼻の先で姿を追うことができたのでいいよと言った。ほんの一瞬だけ目を話した瞬間、姿が見えなくなってしまった。警察に通報し、スーパーの隅々、近隣までくまなく探したが見つからなかった。

いくら捜索しても見つからず、0時を過ぎた時、心ちゃんの命を諦めた。
寒い日だったので、どうか少しでも暖かい場所にいてほしい。神様に何度もお願いをした。
生きているかもしれないという、ほんの少しの希望だけが支えだった。

翌日、心ちゃんが亡くなった現実を突きつけられたその日、光を失ってしまったこと。
家に帰ると待ち受けていた無数のマスコミに囲まれて、まるで見世物のような扱いを受けたこと。
親である資格がないなど、心ない人たちからのメールの数々。

身も心も憔悴しきり、奥さんとお子さん達と家族会議を行なったそうです。
「いいな?」という清水さんの問いかけに誰の異論もなく、一家5人で死のうと決めた日。

けれども、警察の方達がずっと付き添っていて、死ぬ暇がなかった。
誰も信用できなくなったけれども、助けてくれた人たちの存在が、家族を支えてくれた。

清水さんは繰り返しこう話されていました。
「犯罪被害にあうと、生きている方向がわからなくなる」

遺族は、自分が生きていていいのか、どこに向かって生きていけばいいのかもわからない。
だから助けてください。と何度も話されました。
生きる方向を示してくれたのは、助けてくれた人たちの存在があったこと。
特別なことでなくても、一声かけてくれるだけでも救われる、そう話されていました。

「犯罪被害者が、生きていても悪くないと思える日がくる世の中にしたい」
犯罪被害者も加害者も生まれない世の中にするため、今は死んではいけいないと強く思っている。
犯罪は被害者家族を絶望の淵へと追いやります。
それは清水さんの3人のお子さんたちのその後の人生にも影響したそうです。
片耳が聞こえなくなったり、学校に通えなくなったりと様々なことが起きてしまいます。
それでも、前を向き懸命に生き続ける清水さんご家族の姿に強く感銘を受けました。

最後に心ちゃんが一生懸命生きた3年間の足跡の動画を見ました。
自分も子を持つ親として、清水さんの悔しさに思いを馳せて、涙が止まらなくなりました。
加害者は今も服役中とはいえ未来があります。
「加害者は無期懲役ですが、いつかは刑務所から出てきます。娘の未来は無残に奪われてしまった。しかし、娘の未来を奪った加害者には未来がある」
清水さんは、そう悔しそうに話されていました。

犯罪被害者の支援は、都道府県によってバラバラでまだまだ浸透していないのが現状です。
清水さんがおっしゃっていた、被害者の方たちが生きていても悪くないと思える世の中になるように、そして被害者も加害者も生まれない世の中にできるように。
いち個人として、そしてパトランとしてできることに取り組んでいきたい。
そう強く思いました。

 

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