パトランでは『街頭犯罪や事故の減少』『認知症高齢者の行方不明』『社会的孤立』を重要課題として捉えて活動を行なっています。それぞれの課題の現状と、パトランにおける活動実績(23年度)をまとめました。
(1)刑法犯の認知件数
2023年度の全国での刑法犯の認知件数は”703,351件”でした。これは前年度と比べ102,020件増加しています。犯罪数が最小だった2021年度以降増加傾向にあり、コロナによる行動制限が緩和されてきたことが大きな要因だと考えられます。実際の件数はもちろんですが、体感治安(そこに暮らす人たちが安心して暮らせているかどうか)も重要な要素です。
10年前と比較して犯罪件数は減っているものの、”体感治安が改善されていない”ことも調査で明らかになっています。
(2)認知症高齢者の行方不明
日本では、認知症高齢者の行方不明者数が年々増加しています。警察庁のデータによると、2023年は1万9039人で、統計を取り始めた2012年以降で毎年増加しており、23年は過去最多となりました。その数はこの10年でおよそ1.8倍に増加しています。行方不明者のうち、遺体で見つかったのは502人。多くは発見されていますが、発見までに数日から数週間かかる場合や、残念ながら死亡して発見されるケースもあります。高齢者は増加していることから、今後もさらにこの数は増えていくことが予想されます。
(3)社会的孤立
日本では社会的孤立、独居世帯の増加など、一人で悩み、一人で社会生活をしていかなければいけない状況が深刻化しています。社会的孤立状態の人が日本国内には1900万人いるとの調査結果があります。OECDの加盟国20か国中もっとも高い割合です。社会と断絶した状況は様々な課題の要因となります。
<健康への影響>
社会とのつながりが弱い状況は、健康上にも影響すると言われており、1日にタバコを15本吸うのと同じくらい寿命を縮める影響があると言われています。また良好な人間関係が寿命に与える影響も多くの研究から明らかになっています。アメリカのブリガム・ヤング大学の研究によると、死亡リスクが高まる率として、「社会的孤立」が1.29倍、「孤独感」によるものが1.26倍、「一人暮らし」が1.32倍という結果が出ています。
<自殺、孤独死への影響>
警察庁によると、2023年自殺者数は21,837人でした。日本の自殺率は世界的にも高い水準にあります。年代別にみると、50代が最も多く、全体の約20%を占めています。仕事や家庭に忙殺され、友人とのつながりや趣味に使える時間が減少し、社会的な孤立感が増しています。特に職場外での社会的つながりが乏しい場合、孤独感が強まり、ストレスを解消する機会が少なくなることも要因とされています。
<人間関係の希薄化>
日本は災害大国です。近年では、毎年のように地震や豪雨被害が相次いて起きています。個人の孤立が進むと、地域全体の絆が弱まり、共同体意識や相互扶助が低下することがあります。来たるべき災害に備えるためにも、共助の関係性を育むことは非常に重要です。
2023年度の活動実績
2023年度(2023/4/1~2024/3/31)の日本全国での活動人数は36,980人、活動時間は37,546時間となりました。どちらとも前年と比較し増加し、過去最多となりました。
(集計はパトラン活動集計ツール「パトっち」でカウント)
現場対応・まちの異変
パトラン中は街中で起こるさまざまな異変などに対応しています。
ひとつは緊急を要する人や困っている人のサポート。2023年度は過去最多64件の人助け、19件の交通事故現場での対応を行いました。人助けでは、路上で具合が悪くなった人や怪我人のサポートなどがあります。また事故現場に遭遇した場合は、二次被害を防ぐための交通誘導や警察、救急車の手配などを行なっています。
犯罪や事故を防ぐために、それらが起きにくい環境をつくることが重要です。パトラン中に発見した道路のインフラの欠損などは行政に連絡し改善を促しています。23年度は339件を報告し、うち128件が改善されています。
認知症高齢者の行方不明捜索
警察からの情報提供をもとに活動時に捜索するケースも増えてきています。京都では、チーム活動中に認知症高齢者を無事発見し、表彰いただいた例もあります。パトランはこれからも増え続けるであろう行方不明者の捜索に大きな力を発揮することに期待を寄せられています。